都市と人々の安全
地震が発生したとき、断層面が壊れてズレが生じる領域を震源域といいます。特に、プレート境界付近で、地震発生時に高速で動き、地震波を発生させる領域を強震断層域と呼びます。Figure 1において、南海トラフ地震の強震断層域は灰色の太線の円で示されています。(Cabinet office [3]) それには、中央構造線の南側の広い範囲が含まれます。2011年の東北地方太平洋沖地震では、震源域は海岸から160km離れた場所でしたが、南海トラフ地震では、都市の直下になる可能性があります。
被害想定(NHK [1])によると、津波による死者は21万5千人、建物の倒壊による死者は7万3千人に達し、犠牲者総数は29万8千人に達すると見込まれています。
巨大地震を生き延びる最良の方法は、逃げることです。私たちは7月に南海トラフ地震を想定した予行演習を行うことを提案しています。予測された津波より低い場所に住んでいる人、またはFigure 1の強震断層帯の内側で耐震性の低い建物に住んでいる人は、より安全な場所、より安全な建物に避難する必要があります。企業が率先して取り組んでくれることが、最も重要な要素です。シェルターの活用などの、公的機関による支援もとても役に立ちます。病院の移動は最も困難なことだと思われますが、それゆえ予行演習を行うことが価値があります。地震発生時にお年寄りや入院患者は、最も脆弱な立場に置かれるからです。安全な場所に避難するための時間と支援を必要とするため、予行演習でそのプロセスを確認しておく必要があります。
2011年3月11日の東日本大震災では、2万2000人が突然津波に巻き込まれ、冷たい海へと流されました。私たちは今でもその恐怖を鮮明に覚えています。2020年の新型コロナウイルスのパンデミックでは、私たちは長い孤立期間を経験しました。企業や公的機関による適切なサポートがあれば、1か月間の短距離移動はそれほど難しいことではありません。
Table 2は、津波の高さと到達時間に関する被害想定(NHK [1])からの抜粋です。大きな津波が5分以内に到達する場合、地震発生後に避難することはほぼ不可能です。地震発生前に避難を完了する必要があります。そのため、予行演習を真剣に行うことが重要となります。例えば、会社の建物や従業員の自宅が予想される津波よりも低い場所にある場合、まず、避難計画を慎重に検討する必要があります。そして、従業員とその家族の命を守り、会社の資産への被害を最小限に抑えるために、円滑に避難を実行する必要があります。地震が7月に発生した場合、予行演習はその時に終了します。そうでない場合は、実際の避難を評価し、通常の生活に戻るか、より良い方法で避難生活を継続するかを選択することになります。
Reference
[1] NHK, Damage estimation of Nankai Trough Earthquake, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250331/k10014762791000.html#anchor-20
[2] Chubu Electric Power, Enhanced Safety, https://www.chuden.co.jp/energy/nuclear/hamaoka/anzen/setsubitaisaku/
[3] Cabinet office, Seismic source zone of Nankai Trough Earthquake, https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku/pdf/1_1.pdf