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核問題への解決策

私たちは、日本南部でマグニチュード8.4の南海トラフ地震に直面しています。新たな被害想定によると、伊方原発と浜岡原発における津波の高さは20メートルです。(NHK [8]) 伊方原発では、3号機がMOX燃料を使用して現在も稼働しており、770トンの使用済み燃料が冷却プールに保管されています。浜岡原発では、1,130トンの使用済み燃料が冷却プールに保管されています。伊方原発は中央構造線上に、浜岡原発は3つのプレート境界上に建設されています。もし明日南海トラフ地震が発生した場合、原発で働くすべての人が命を落とし、世界中の人々が安全な食料と水を永遠に失うことになります。

私たちの未来と命を守るために、私たちは自らこの危機の解決策を模索しなければなりません。現在、私たちは以下の危険に直面しています。
1. 1万9000トンの使用済み核燃料
2. 12基の稼働中の原子炉
3. 東海村の高レベル放射性廃棄物
4. もんじゅのプルトニウム
たつき諒さん(The Economic Times [9])の予測が正しいと仮定して、これらの問題に対する解決策について考えます。

1. 使用済み核燃料19,000トン

使用済み核燃料の保管方法は、冷却プールと乾式キャスクの2種類があります。
冷却プールの最小水深は6メートルですが、通常は12メートルです。水は使用済み燃料を冷却し、燃料から放出される放射能を遮蔽する役割を果たします。また、冷却プールは水の漏洩を検知する必要があります。(Wikipedia (Spent fuel pool) [7]) 乾式キャスクは密閉された鋼鉄製の円筒で、使用済み燃料棒を不活性ガスで包んで保管します。(Wikipedia (Dry cask storage) [1]) 乾式キャスクは、電気を使わずに使用済み燃料を冷却することができます。乾式キャスクの寿命は数十年から100年です。原子炉から取り出された使用済み核燃料は最も危険ですが、冷却プール内では使用済み燃料の放射能は急速に減少するため、数年後には乾式キャスクで保管することができます。乾式キャスク貯蔵前のプールでの最低冷却期間は、通常のウラン燃料の場合は1年、MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合燃料)の場合は3年です。(United States Nuclear Regulatory Commission [2], Satoshi Ishikawa et al.[3]) 乾式キャスクの価格は約1億円~2億円(約100万ドル~200万ドル)で、1基のキャスクには10トン~15トンの使用済み燃料を貯蔵できます。

Figure 7は各原子力発電所の冷却プールに貯蔵されている使用済み核燃料の(貯蔵量/貯蔵容量)(単位:トン)を示しています。冷却プールでは、電源が失われると3日以内に燃料がメルトダウンします。そのため、使用済み核燃料の保管には乾式キャスクを使用するのが最善の解決策です。しかし、十分な数の乾式キャスクがすぐに入手できるとは限りません。南海トラフ地震を乗り切るためには、東北地方や海外など、電源が確保され津波の危険のない冷却プールを利用する必要があるかもしれません。伊方原発と浜岡原発の使用済み燃料は、今すぐ乾式キャスクで保管するか、より安全な場所へ移送する必要があります。日本の南部にある他の発電所の使用済み燃料も同様に防護する必要があります。

浜岡原発では、現在も1130トンの使用済み核燃料が冷却プールに保管されています。中部電力のホームページによると、建屋の耐震性を1200ガルに高め、防波堤も増設したとのこと。(Chubu Electoric Power[4]) しかし、それらは全く無意味です。浜岡原発は3つのプレートの境界に位置しており、想定される地震は1200ガルよりはるかに激しいはずです。新たな被害想定(NHK [8])によると、浜岡における津波の高さは20メートルとされています。浜岡原子力発電所の海抜は約6メートルです。仮に14メートルの防波堤を建設したとしても、それが機能する保証はありません。防波堤の下で地盤の液状化が起こる可能性があり、実際の津波の高さは25メートルから30メートルになる可能性があります。2011年の東北地震から学んだことは、津波から生き延びるには逃げるしかないということです。岩手県田老では、街を守るために、高さ10メートル、長さ2キロメートルの巨大な防波堤を建設していました。しかし、実際の津波は防波堤をはるかに超えて押し寄せ、防波堤をプリンのように破壊しました。したがって、最善の解決策は、使用済み核燃料を乾式キャスクに入れて、津波の届かない安全な場所に移すことです。

2. 12基の稼働中の原子炉

伊方原発の原子炉を今すぐ停止させる必要があるのは明白です。新たな被害想定(NHK [8])によると、他の原子炉は比較的安全に見えます。しかし、私たちは南海トラフ巨大地震に直面しています。巨大地震が、強震断層帯の北端にあたる中央構造線で発生する可能性があります。(Figure 8, Cabinet office [9])  南海トラフ地震は、若狭湾の断層線にズレを誘発し、川内原子力発電所周辺の火山活動を活発化させる可能性もあります。日本の原子力発電所の耐震限界はM6.5(620ガル~1200ガル)に過ぎません。南海トラフ地震が発生する前に、12基すべての原子炉を停止させる必要があります。

原子力発電所は、1年間で天然ウランの数十億倍の強度の放射性物質を生産する施設であり、その後10万年、その管理を続けなければなりません。この狂気の行為の真の目的は不明ですが、私たちにとっては受け入れがたい危険以外の何ものでもありません。日本政府は「核燃料サイクル」を提唱しています。(Agency for Natural Resources and Energy[5])しかし、日本は4つのプレートの境界上に位置し、放射性廃棄物の地層処分を安全に行うことは不可能です。10万年後、地図上の日本の形は、大きく変わっているはずなのです。したがって、「核燃料サイクル」は閉じていません。南海トラフ地震に直面している状況で、この「核燃料サイクル」のために12基の原子炉を動かし続けることは、全人類に対する自爆テロになりかねません。

ここでは、12基の原子炉を止めることに成功したと仮定して、議論を続けます。原子炉から取り出された使用済み核燃料は、乾式キャスクに貯蔵するには熱すぎるので、通常のウラン燃料では少なくとも1年、MOX燃料では少なくとも3年は待たなければなりません。MOX燃料は現在、玄海(3号機)、伊方(3号機)、高浜(3号機、4号機)の4基で使用されています。私たちの解決策は、原子炉から取り出された使用済み核燃料をより安全な場所にある冷却プールに移送することです。 通常、原子炉から取り出した使用済み燃料は、原子炉に隣接する冷却プールに送られます。しかし、輸送用キャスクを使用すれば、原子炉から100km離れた冷却プールに燃料を移動させることも可能です。 伊方と浜岡では、高さ20メートルの津波が原子力発電所を襲うと予想されています。使用済み燃料を取り出した後、原子炉も津波から防護する必要があります。「structure relocation」(構造物移転)と呼ばれる方法を使用して原子炉を移動することができます。(YouTube [6])

3. 東海村の高レベル放射性廃棄物

JAEA(日本原子力研究開発機構)は、東京の北東100kmに位置する東海村に、高レベル放射性固体廃棄物6,500本(200リットル容器換算)、高レベル放射性液体廃棄物約400立方メートルを保管しています。前者(固体廃棄物)は燃料棒のエンドピースと被覆管等であり、後者(液体廃棄物)はガラス固化の失敗によって生成されました。特に液体廃棄物は非常に危険なので、できるだけ早く固定化する必要があります。 JAEAは高レベル放射性液体廃棄物のガラス固化作業を2028年までに行う予定でしたが、一連の事故を受け、2038年まで延期しました。 彼らは1970年代に試験が始まってから約50年間、ガラス固化ができていません。 失敗の主な原因は、放射性廃棄物中のPlatinoids(プラチノイド)であり、これについては後述します。(Kazuyoshi Uraga et al. [16], Energy Frontline [17]) この問題に対する我々の解決策は、Ted RingwoodとANSTO(Australian Nuclear Science and Technology Organisation、オーストラリア原子力科学技術機関)によって確立された複数のセラミックの集合体である「Synroc」です。 (World Nuclear Association [11], ANSTO [10]) ANSTO は放射性廃棄物の固定化のためのプロフェッショナルサービスも提供しており、Idaho国立研究所における放射性廃棄物の固定化など、同様のプロジェクトの経験があります。 (Eric Vance et al. [15]) したがって、Synroc および ANSTO によるプロフェッショナルサービスを使用することにより、今すぐに満足のいく結果を得ることが可能です。 Synroc が最適な解決策である理由は、「高レベル放射性廃棄物の固定化」のセクションで説明しています。

4. もんじゅのプルトニウム

現在、日本は8.6トンのプルトニウムを貯蔵しています。そのうち400kgはもんじゅに、400kgはMOX燃料として原子力発電所に、残りは六ヶ所村と東海村の再処理工場と東海村のMOX燃料加工工場に保管されています。(Cabinet Office [18]) プルトニウムは生物に対して極めて有害であり、地震に備えて安全に保管する必要があります。もんじゅのプルトニウムは、南海トラフ地震が発生する前により安全な場所に移す必要があります。単なる廃棄物として考えるならば、シンロックで固定化するのが最善です。

5. 中長期的な解決策

冷却プールの使用済み核燃料の保管には乾式キャスクを、高レベル放射性廃棄物の固定化にはSysrocを提案しました。これらは南海トラフ地震を乗り越えるための解決策です。

核廃棄物の長期的な解決については、日本国内で地層処分を行うことは不可能です。したがって、核廃棄物の処理には明確な終着点がありません。私たちは、廃棄物を安全に保管しながら、より良い解決策が見つかるまで待たなければなりません。

中期的な解決策に関しては、やるべきことがまだたくさんあります。 HLWの放射能については、最初の数世紀では、セシウム 137(137Cs) やストロンチウム 90(90Sr) などの FP が主な発生源となります。この期間を過ぎると、MA の寄与が FP の 1000 倍になります。現在は、MOX燃料を製造するために、使用済み核燃料からウランとプルトニウムの分離を行っていますが、これからは廃棄物の管理を最適化するために、元素の分離を行う必要があります。長い半減期を持つFPとアクチノイドを残りの廃棄物から分離することが重要です。可能であれば、長い半減期を持つ放射性物質から安定な物質への元素変換を試すべきであり、元素変換の基礎研究も続けるべきです。 (National Research Council [12]) また、分離された廃棄物のセラミックスによる固定化や乾式キャスク自体の改良等により、乾式キャスクの保管を改善する必要があります。 分離と元素変換の技術は、福島のメルトダウン廃棄物の処理にも役立つはずです。

ここまで、提案した解決策のコストについては言及しませんでした。その理由の一つは、南海トラフ地震を生き抜くために、なんとしても課題を解決しなければならないからです。 もう一つの理由は、日本においては原発関連のプロジェクトに対しては資金がたくさん使われていることです。六ヶ所村の再処理工場では過去30年間で15兆円(1500億ドル)が使われていますが、依然としてHLWを固定化できていません。増殖炉「もんじゅ」は1兆円を費やし、一度も稼働することなく解体処分されることになりました。 JAEAはこの未使用プラントの廃止措置に対して、30年におよぶ計画を提出し、承認されました。我々には、政治的なことを議論している時間はありませんが、日本の原子力政策がこの腐った体制によって主導されていることを、全ての人が認識しておくべきだと思います。

References
[1] Wikipedia (Dry cask storage), Dry cask storage, https://en.wizkipedia.org/wiki/Japan_Median_Tectonic_Line
[2] United States Nuclear Regulatory Commission, Dry Cask Storage, https://www.nrc.gov/waste/spent-fuel-storage/dry-cask-storage.html
[3] Satoshi Ishikawa et al., Investigation on the current situation of spent nuclear fuel storage in Germany (Japanese), https://confit.atlas.jp/guide/event-img/aesj2019f/2O19/public/pdf?type=in
[4] Chubu Electoric Power, In Pursuit of Greater Safety, https://www.chuden.co.jp/english/energy/hamaoka/provision/
[5] Agency for Natural Resources and Energy, The Current Status of the Nuclear Fuel Cycle to Efficiently Utilize Spent Fuel, https://www.enecho.meti.go.jp/en/category/special/article/detail_186.html
[6] YouTube, How engineers move entire buildings, https://www.youtube.com/watch?v=vKZjUejAjoQ
[7] Wikipedia (Spent fuel pool), Spent Fuel Pool, https://en.wikipedia.org/wiki/Spent_fuel_pool
[8] NHK, Damage estimation of Nankai Trough Earthquake, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250331/k10014762791000.html#anchor-20
[9] The Economic Times, Japan’s “Baba Vanga”, https://economictimes.indiatimes.com/news/new-updates/japans-baba-vanga-predicts-mega-disaster-in-next-three-month/the-rise-of-ryo-tatsuki/slideshow/120157960.cms?from=mdr
[10] ANSTO, Ansto synroc, https://www.ansto.gov.au/products/
[11] World Nuclear Association, Synroc wasteform, https://world-nuclear.org/information-library/appendices/synroc
[12] National Research Council, Nuclear Wastes: Technologies for Separations
and Transmutation, The National Academies Press, Washington, DC, 1996.
[15] Eric R. Vance, Dorji T. Chavara, and Daniel J. Gregg. Synroc develop-
ment—past and present applications. MRS Energy Sustainability, 4:E8,2017
[16] Kazuyoshi Uruga,Takeshi Tsukada,Tsuyoshi Usami, Generation mechanism and prevention method of secondary molybdate phase during vitrification of PUREX wastes in liquid-fed ceramic melter, Volume 57 Issue 4, 2020, https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00223131.2019.1691071
[17] Energy Frontline, Vitrification in Reprocessing Plants (Japanese), https://ene-fro.com/article/ef88_a1/
[18] Cabinet Office, Japan’s plutonium management status in 2023 (Japanese), https://www.aec.go.jp/bunya/04/plutonium/20240716.pdf